今回は、鶴田一郎の美人画が有名な理由を解説し、美人画のなかでも注目の代表作品を4つ紹介します。
鶴田一郎の美人画が有名な理由
それでは、鶴田一郎の美人画が人気を集める理由について、作品の持つ魅力にも目を向けながら解説していきます。
1987年から11年間、化粧品のテレビCMにて鶴田一郎の美人画が起用された
鶴田一郎がノエビア化粧品のテレビCMに起用されたのは、彼が33歳になった頃です。ファッション雑誌「STYLING」の表紙に描かれた作品を目にして、グラフィックデザイナーでありアートディレクターの亀倉雄策が鶴田一郎を抜擢しました。戦後日本のグラフィックデザインを牽引してきた商業美術界の重鎮、亀倉雄策に才能を見出され、鶴田一郎は飛躍的に知名度をあげることとなります。
また、ノエビアの「コスメティックルネサンス」のCMは、1987(昭和62)年から1998(平成10)年まで11年も続きました。これにより、鶴田一郎の美人画はあらゆる世代の老若男女に広く知られるようになったのです。
鶴田一郎の美人画のアールデコ様式を取り入れた作風が特徴的
鶴田一郎の美人画は、アールデコ様式の作風で知られています。アールデコとは1920年代に生まれたムーブメントで、装飾的な美しさよりもシンプルで機能的な美しさを重視する美術運動です。鶴田一郎の美人画におけるシンプルで無駄のない画面構成や、動きのある独特のポージングは、まさにアールデコを思わせる特徴だといえるでしょう。
また、鶴田一郎は切れ長の目元のクールビューティーな女性を描くことで知られていますが、ぱっちりとした目をした親しみのある女性を描いた作品もいくつか描いています。いずれにしても、鶴田一郎の描く美人画は目元が大変印象的であり、余分な装飾のないシンプルな画面構成が美しい目元をより一層引き立てています。
東洋の女性の美をアールデコ様式を取り入れた作風で表現しているのが、鶴田一郎の美人画における大きな魅力です。
鶴田一郎様式琳派シリーズや仏画でも評価が高い
鶴田一郎は美人画以外にも、鶴田一郎様式琳派シリーズや鶴田一郎様式の仏画なども手がけています。30代半ばから制作している琳派シリーズは、アールデコにも影響を及ぼした日本の美術様式、琳派を思わせる作品群です。鶴田一郎様式琳派シリーズのなかでは、40代後半から手がけた「雪」「月」「花」という作品が特に知られています。また、鶴田一郎は50代半ばから仏画の制作も始めました。鶴田一郎の美人画における切れ長の美しい目元は、もともと仏教美術の影響を受けて生まれたものだといわれています。鶴田一郎様式の仏画では「弥勒菩薩 福音」や「美麗菩薩」が知られています。
これらの作品は、美人画に続いて高い評価を得ています。
鶴田一郎の略歴
次に、2026年に画業50年を迎える鶴田一郎について、その足跡を追ってみましょう。1954年:熊本県本渡市(現在の天草市)に生まれる
熊本県天草市 十三仏公園からの妙見浦の風景出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鶴田一郎は1954(昭和29)年、熊本県の本渡市(現在の天草市)に生まれました。小さいころから絵を描くのが得意だった鶴田一郎は、小学校のスケッチ大会でよく入賞していたといいます。鶴田一郎は中学・高校時代に、女性の絵を描き始めました。
1972年:高校卒業後、多摩美術大学グラフィックデザイン科へ進学
1972(昭和47)年に高校を卒業すると、鶴田一郎はイラストレーターになる夢を叶えるために多摩美術大学のグラフィックデザイン科へ進学しました。大学ではスーパーリアリズムの追求に力を入れ、写真以上のリアルさを持つ作品を制作しようと力を尽くします。鶴田一郎は、大学卒業後に独立の道を選びます。独立して間もないころには書籍の表紙絵やレコードのジャケットをよく手がけていました。
1980年代から、鶴田一郎の代名詞である美人画の模索が始まりました。昔から好きだった琳派、浮世絵、アールデコ様式、仏教美術などから影響を受けた切れ長の目をしたクールな女性を、4~5年のときを経て生み出します。
1987年:鶴田一郎の作品がノエビア化粧品の広告に使われる
ノエビア本社出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1987(昭和62)年、アートディレクター亀倉雄策が鶴田一郎の美人画をノエビア化粧品の広告に起用します。これをきっかけに鶴田一郎の知名度は飛躍的に上がりました。さらに、2000年代前半にはパリでの個展やニューヨークアートエキスポ、上海アートフェアなどを通じて活動の幅を広げます。
創作においても、40代後半となる2000(平成12)年頃からはやわらかい雰囲気の女性を描いた「まなざしシリーズ」や鶴田流琳派の大作を手がけ、表現の幅を広げていきました。また、2009(平成21)年からは仏画にも挑戦しています。
2014年:島田美術館(熊本)、石橋美術館(福岡)にて個展開催
2014(平成26)年、鶴田一郎は地元である熊本県の島田美術館や、福岡県の石橋美術館で個展を開催しました。また、2019(令和元)年にはニューヨークで個展を開催し、同年に参加したアートマイアミでは鶴田一郎の作品がマイアミ美術館に収蔵されます。2026(令和8)年に画業50周年を迎える鶴田一郎はさまざまなスタイルや技法に挑戦しながら現在も精力的に活動を続けています。
鶴田一郎の代表的な美人画作品
鶴田一郎の代表的な美人画を四つ取り上げて紹介します。私に帰るとき
『私に帰るとき』は鶴田一郎が2016(平成28)年に制作した作品です。ピンク色のドレスを着た美しい女性が社交パーティーから帰宅したところをイメージして描かれました。濃いピンクのドレスから薄いピンクの女性の頬まで、さまざまな濃度のピンクが見事なグラデーションで表現されています。香り立つような女性の美しさも『私に帰るとき』の見どころの一つです。この作品は2017(平成29)年にジクレー版画化されています。Beautiful Red
2019(令和元)年に制作された『Beautiful Red』は、鮮やかな赤い背景に黒い手袋をしたクールな女性が描かれた、大変人気の高い作品です。同年のニューヨーク個展で発表されました。こちらに目線を向ける女性の表情と赤と黒のくっきりとした対比が、観るものに強い印象を与えます。『Beautiful Red』は2022(令和4)年にジクレー版画化されました。Graceful Big Hat Purple
『Graceful Big Hat Purple』には、赤い背景に紫色のつば広帽子をかぶった横顔の貴婦人が描かれています。この作品では大きな帽子を女性の憧れのファッションとして描きました。赤と紫の組み合わせが非常に華やかな印象を与える作品です。2021(令和3)年に原画が制作され、同時期にジクレー版画化されています。同じシリーズに『Graceful Big Hat Yellow』と『Graceful Big Hat Pink』があります。
永遠のまなざし
『永遠のまなざし』は、鶴田一郎の「まなざしシリーズ」のなかの一つです。まなざしシリーズはバブル時代の終わり後、そしてノエビアのイメージが強くなりすぎた頃に描かれた作品で、愛情やぬくもりを感じる作品を作りたいという思いから生まれました。特に『永遠のまなざし』は、鶴田一郎にしては珍しいぱっちりした目が特徴で、かわいらしさや親しみやすさが感じられます。2011(平成23)年にジクレー版画化されました。「ICHIRO TSURUTA gallery」で不定期に開催される「鶴田一郎 新作美人画展」では原画が鑑賞可能
「ICHIRO TSURUTA gallery」は、2014(平成26)年に開設された、京都市下京区にあるギャラリーです。このギャラリーでは原画・版画作品に加えて、さまざまなグッズが展示・販売されています。さらに、通常の展示会では観られないような大型原画作品も展示してあるので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
また、「ICHIRO TSURUTA gallery」では不定期に「鶴田一郎新作美人画展」を開催しています。展覧会情報については下記のサイトでご確認ください。
ICHIRO TSURUTA galleryはこちら
鶴田一郎アーティストサイトはこちら
鶴田一郎の描く美人画の価格の相場
鶴田一郎の描く美人画は先ほど紹介した「ICHIRO TSURUTA gallery」や「鶴田一郎 オフィシャルアートストア」という公式オンラインストアで購入できます。鶴田一郎 オフィシャルアートストアによると、版画作品は数万円から40万円程度の価格帯で販売されています。鶴田一郎 オフィシャルアートストアでは、ほかにもポスター、限定品、画集などを幅広く取り扱っています。
鶴田一郎オフィシャルアートストアはこちら
鶴田一郎の美人画作品まとめ
鶴田一郎の美人画はアールデコ様式を取り入れた作風で知られています。シンプルで無駄のない画面構成や、動きのある独特のポージングが特徴で、特に切れ長の目元が印象的なクールビューティーな女性は鶴田一郎の代名詞となっています。1987(昭和62)年にノエビア化粧品の広告に起用されてからは、ますます有名になり人気が高まりました。
「鶴田一郎 オフィシャルアートストア」では美人画の版画が購入可能です。また、美人画の原画は「ICHIRO TSURUTA gallery」で不定期に開催される「鶴田一郎 新作美人画展」で鑑賞できます。
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