今回は、ルイ・イカールの代表作品を彼の得意とした銅版画のなかから2点取り上げ、略歴なども交えながら紹介します。
ルイ・イカールの代表作品を解説
妖艶でありながらかわいらしさも感じられるルイ・イカールの代表作品を2点紹介します。
リリィ
リリィ(1934年)
『リリィ(Lilies)』は、48cm×79cmの暗い背景に白いドレスの女性が浮かび上がるように描かれた美しい銅版画です。1934年にニューヨークで制作されました。
たくさんの白いユリの花を胸に抱いた女性が、祈るような表情で斜め上に顔を向けている様子からは気高さが感じられます。『リリィ』はアンティークとしても価値の高い、人気の作品です。
狩猟Ⅱ
狩猟Ⅱ(1930年)
『狩猟Ⅱ』は、1930年に制作された知的な印象を受ける銅版画です。女性と3匹の犬が描かれた構図は非常に躍動感があり、アールデコらしさが感じられます。
微笑むような表情を浮かべて白い衣をたなびかせる金髪の女性は、妖艶さとかわいらしさが同居した独特の魅力を持っています。
ルイ・イカールの略歴
次に、ルイ・イカールの50年弱に渡る画家人生や、彼の私生活について紹介します。
1888年:南フランスのトゥールズで生まれる
ルイ・ジャスティン・ローラン・イカール(Louis Justin Laurent Icart )は、1888年、南フランスのトゥールーズに生まれました。裕福な銀行家ジャン・イカールとその妻エリザベートの間に長男として生を受けたイカールは、幼いころから絵やファッションに興味を持っていました。イカールは、1904年に地元のトゥールーズ高等商業学校を卒業します。
1905年:友人と演劇界を目指してパリへ
パリの凱旋門
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1905年、演劇界へ進むことを決心したイカールは、友人とともにパリへ向かいました。パリでは生活のために絵はがき工房で働き、エッチングやリトグラフの技術を学びます。
イカールは1908年に雑誌「演劇批評」の表紙イラストを任され、高い評価を得ました。画家を目指し始めたイカールは、1911年に「散歩の前に」「バラのメヌエット」「オペラ座にて」などのエッチングを制作します。
1912年:未亡人と結婚し最初の個展を開く
イカールはオートクチュールのアトリエで最初の妻となる年上の未亡人と出会い、1912年に結婚しました。
また、イカールは1912年にバルセロナのギャラリーで初めての個展を開き、翌年にはラ・ボエシー画廊の第3回展に作品を出品します。さらに、1913年にはワグラム画廊によってイカールの作品がアメリカで販売され、人気を集めます。
1914年:ファニー・ヴォルメールに出会う
1914年、イカールはファニー・ヴォルメールという18歳の美しい女性と出会います。彼女はのちにイカールのモデルを務めるようになりました。
また、1914年にエリゼ宮でパリ・オペラ・バレエ劇団が開催したデンマーク国王夫妻歓迎特別公演で、イカールは衣装のデザインを担当しました。さらに、イカールの個展が「ガゼットデュポントン」というファッション誌の主催で、ベルギーのブリュッセルにおいて開催されます。同年、ベルギーのゲントで行われた展覧会では栄誉賞も受賞しました。
1917年:戦争とユーモア画家展に版画を出品
1917年、イカールはラ・ボエシー画廊が開催した「戦争とユーモア画家展」に版画作品4点を出品しました。第一次世界大戦にパイロットとして参加したイカールは、1918年の終戦とともに復員します。
イカールは1920年にシモンソン画廊で油彩画の個展を開きました。同年、イカールはファニー・ヴォルメールと2度目の結婚を果たします。
1922年:ニューヨークの画廊ベルメゾンで個展
1922年、イカールはファニーとともにアメリカのニューヨークへ渡り、百貨店の画廊ベルメゾンで個展を開いて成功を収めました。この個展は翌年にフィラデルフィアへ巡回し、あわせてイカールもフィラデルフィアへ向かいます。
その後、1920年代後半のイカールは芸術的にも経済的にも大きな成功をおさめることとなります。1925年のパリ万博をきっかけに世界へ広まったアールデコの流行とともに、イカールの人気はピークに達しました。
イカールは1927年にフランスで最高位の勲章として知られるレジオン・ドヌール勲章の5等勲章を受章します。1932年、イカールはニューヨークのメトロポリタン画廊で油彩画の連作「白いヴィジョン」を発表する展覧会を開催しました。
1940年:ドイツ侵攻をテーマにしたエクソダスを制作
第二次世界大戦勃発後の1940年、イカールはドイツ軍の侵攻をテーマにした連作「エクソダス」を制作します。1944年にパリが解放されると、中断していた作品制作を再開しました。
1950年12月30日、イカールはモンマルトルの自宅で亡くなり、イットヴィルの共同墓地に埋葬されました。
ルイ・イカールの作品の世界観
誘惑(1921年)
出典元:flickr
ルイ・イカールの作品は、優雅で妖艶な女性を繊細に描いた銅版画が特に人気です。パリに暮らす女性の美しさをたくみに写し取り、アールデコ時代の空気感を伝える数々の名作を残しました。
絵はがき工房で画家人生をスタートさせたイカールは、商業美術出身のアーティストです。それゆえに彼の描く作品はデザイン性が高く、女性は非常にスマートでファッショナブルに描かれ、その時代における理想の女性像が反映されています。
イカールの作品の多くは複雑なテクニックを用いた銅版画です。主題としては美しい女性のほかに、馬、犬、猫なども多く描いています。
ルイ・イカール美術館京都で「サラブレッド」の鑑賞が可能
京都市左京区にある「ルイ・イカール美術館京都」は、1958年に結ばれたパリ市と京都市の姉妹都市提携にちなんで、二つの都市の交流を深めることを目的に設立されました。ここでは、女性と馬がスピード感あふれる構図で描かれた『サラブレッド』という作品を鑑賞できます。
「ルイ・イカール美術館京都」は、ルイ・イカール作品のコレクターの私邸という設定で展示されており、くつろいだ雰囲気での作品鑑賞が可能です。館内はメインとなる「ギャルリ」、竹林を眺めながら観賞できる「サロン」のほか、朝をイメージした「ル・ジュール」、昼をイメージした「ル・ソワール」、夜をイメージした「ラ・ニュイ」の5つの展示スペースにわけられています。
京都八瀬瑠璃光院の一角に位置する「ルイ・イカール美術館京都」は、瑠璃光院の拝観料を払うことで無料で見学できます。ルイ・イカールの優美な世界観にひたりたい方は、ぜひ訪れてみてください。
ルイ・イカール美術館京都の公式HPはこちら
ルイ・イカールの作品の買取相場
スピードⅠ
出典元:flickr
イカールの作品は、油絵に関しては数が少ないものの評価が高くなります。モノによっては100年以上経過しているため何かしらのダメージを受けているものもありますが、致命的なダメージでない限り大きく評価が下がることはありません。
版画に関しては銅版画(エッチング)で制作されている作品がほとんどです。版画作品の買取金額は数万円台が多いですが、一部の人気作品については10万円以上となる場合もあります。版画の場合は油絵とは異なり、汚れや破損に対して若干厳しく評価されます。また、サインが印刷の場合はポスターと同様の扱いとなるため、値が付きません。
イカールの時代の版画には限定部数を記載する文化がなかったため、限定部数がなくても大丈夫です。油絵でも版画でも、女性と犬が一緒に描かれているものは評価が高くなります。
ルイイカールの代表作品まとめ
ルイ・イカールはアールデコを代表する優れたアーティストです。時代を反映した優美で妖艶な女性を繊細に描きました。特に1934年に制作された『リリィ』と1930年に制作された『狩猟Ⅱ』は彼の銅版画を代表する人気の作品です。
また、ルイ・イカール美術館京都では、スピード感あふれる『サラブレッド』という作品を鑑賞できます。興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
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