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アルフォンス・ミュシャの代表作と美術館を紹介|日本でも塗り絵やイラストが販売されるほど有名なミュシャの紹介


出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アール・ヌーヴォーの代表的作家ともいえるアルフォンス・ミュシャ(1860-1939)は、チェコ出身の画家です。グラフィックデザイナー、イラストレーターとしてもすぐれた頭角を現したミュシャは、絵画作品だけでなくさまざまな舞台のポスターや装飾パネルも制作しました。

曲線をふんだんに使った華やかなデザインと美しい色彩で見る人を惹きつけるミュシャの作品にはファンが多く、現在でも塗り絵やイラストなどのグッズが人気を博しています。

今回はアルフォンス・ミュシャの代表作や、ミュシャの作品が見られる美術館を紹介します。


アルフォンス・ミュシャの略歴


アルフォンス・ミュシャは、1860年に現在のチェコ共和国の南モラヴィア地方で生まれました。若い頃のミュシャは地元の名士の肖像画などを描いて生計を立てていました。20代前半の頃にクーエン=ベラシ伯爵に出会い、これがミュシャにとっての転機となります。

クーエン家の援助を受けることができたミュシャは、ドイツのミュンヘンの美術アカデミーに入学し、卒業後はパリのアカデミー・ジュリアンや、アカデミー・コラロッシで学びます。しかし、29歳のときにクーエン家からの援助が打ち切られると、雑誌や書籍などの挿絵を描いて生計を立てるようになりました。

1894年の年末、34歳のときにミュシャはある舞台ポスターの制作を依頼されます。その舞台は、パリの舞台女優サラ・ベルナールが主演する『ジスモンダ』です。制作したポスターがパリで非常に人気となったため、これを境にミュシャは新進気鋭のアール・ヌーヴォー作家として広く知られるようになりました。

ミュシャが制作するものは、ポスターや装飾パネルの他、印刷物の挿絵も大変な人気を博しました。この頃に制作した木版画やリトグラフが多く残っています。また、1900年に開催されたパリ万博における壁画制作にもかかわり、ミュシャが41歳のときにはレジオン・ドヌール勲章も受章しています。

49歳になると、ミュシャは彼の画家人生で最も有名となる絵画作品『スラヴ叙事詩』の制作を開始しました。『スラヴ叙事詩』とはミュシャが1910年から1928年にかけて手がけた全20作からなる連作で、いずれも壁画サイズの大作です。『スラヴ叙事詩』は彼が68歳のときにチェコ国民とプラハ市に寄贈されました。

ミュシャが79歳のときにドイツがチェコに侵攻し、ゲシュタポに逮捕されるという事件が起きます。ナチス軍の厳しい尋問は高齢のミュシャには大きな負担となりました。ミュシャは数日後に釈放されたものの、数か月後に息を引き取ります。遺体はプラハ、ヴィシェフラットのスラヴィーン墓地に埋葬されました。


「アール・ヌーヴォー」とは? 


アール・ヌーヴォーとは、「新しい芸術」という意味のフランス語で、19世紀末から20世紀の初めにかけて広まった芸術運動、芸術様式を指します。主にフランスやベルギーを中心に繰り広げられたこの運動の特徴は、作品にあらわれる鞭のようにしなる左右非対称の有機的な曲線や鮮やかで美しい色彩です。
花や植物などをモチーフとした曲線をふんだんに用いる華やかなデザインは、ロココ様式や異国趣味、ジャポニズムの影響もうけていると言われています。アール・ヌーヴォーが最も盛んだったのは1900年のパリ万博の頃ですが、その後はいったん衰退しました。

世界的なモダニズムの流行後、1960年代のアメリカでアール・ヌーヴォーのリバイバルが起きます。現在、アール・ヌーヴォーは新古典主義とモダニズムの架け橋として考えられ、再評価されるようになりました。


アルフォンス・ミュシャの代表作品


アルフォンス・ミュシャはアール・ヌーヴォーの代表的画家として、数多くの作品を残しています。『スラヴ叙事詩』という絵画作品の他にも、木版画作品やリトグラフ(石版画)作品など、その作品の幅は多岐にわたります。

それではミュシャの制作したリトグラフ作品のうち、代表的なものを紹介します。


ジスモンダ(リトグラフ)



ジスモンダ (Poster for Gismonda) 1895年 ,リトグラフ
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

1895年の作品で、ミュシャがアール・ヌーヴォーの作家として社会的地位を確立するきっかけとなったものです。フランスの劇作家ヴィクトリアン・サルドゥーによる舞台『ジスモンダ』はキリスト教を主題とする戯曲で、主演は舞台女優のサラ・ベルナールでした。

ナツメヤシを右手に持つジスモンダは、左手を胸にあてて斜め上に視線を向けています。描かれたジスモンダの威厳的で高潔な姿が、多くの人を魅了し大変な人気となりました。

初期の作品ではありますが、モデルの特徴を的確につかんだ表現や様式化された装飾、縦長の画面構成など、ミュシャの作品的特徴をすでに確立していることが伺えます。


椿姫(リトグラフ)

 
『椿姫』のポスターは『ジスモンダ』を制作した翌年、1896年に制作されました。舞台『椿姫』は、劇作家兼小説家のアレクサンドル・デュマ・フィスが自らの小説を戯曲化したものです。(ちなみに、アレクサンドル・デュマ・フィスの父親は、『三銃士』や『モンテ・クリスト伯』を作ったアレクサンドル・デュマ・ペールです。)

『椿姫』とは白い椿を愛する高級娼婦と若い青年との悲恋を描いた物語で、このポスターには白い椿をモチーフとする衣装を身に付けた女性の優雅な立ち姿が描かれています。

背景の紫色のグラデーションに、椿や衣装の清らかな白が美しく映え、『椿姫』の持つ世界観を見る人に鮮やかに焼き付けます。


連作『四季ー春』(リトグラフ)



連作『四季-春』 (The Four Seasons -Spring-) 1896年,リトグラフ
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

1896年に制作された連作『四季』は、ミュシャが初めて手掛けた装飾パネルです。装飾パネルとは、ポスターと同じようにリトグラフで制作される室内に飾って楽しむための作品です。

連作『四季』では、春夏秋冬を美しい女性とそれぞれの季節に合う植物で表現しています。今回紹介している『春』は、花冠をつけた金髪の乙女が若草で作られた竪琴を奏でる姿が描かれた、非常に優美な作品です。

ちなみに、『夏』には池に足をひたして涼をとる褐色の髪の女性、『秋』には夕焼けのようなオレンジ色の光に照らされて葡萄を摘み取ろうとしている女性、『冬』には寒さに凍える小鳥にそっと息を吹きかけ温めてあげるゆったりとした衣服の女性が描かれています。


サロン・デ・サン(リトグラフ)


1897年に画廊サロン・デ・サンで開催された、ミュシャの2度目の個展に向けた告知用のポスターです。豊かな髪を持つ美しい女性がペンと紙を持ち、強い意志を秘めてこちらを見つめている姿が描かれています。

女性が持っている紙には、3つの輪とハートが描かれていることがわかるでしょう。これらの3つの輪は「希望」「信仰」「受難」を、ハートは「愛」をそれぞれ意味しています。

描かれたシンボルや特徴的な装飾からは、ミュシャの持つ芸術性や世界観を感じ取ることができます。この個展の成功によって、ミュシャは芸術家としての社会的地位を改めて固めることとなりました。


黄道十二宮(リトグラフ)



黄道十二宮 (Zodiac) 1896-97年, リトグラフ
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

1896年から1897年にかけて制作された『黄道十二宮』は、ミュシャの代表作として多くの人が思い浮かべる作品です。中心に描かれている横を向いた女性は智天使ケルビムとも言われており、豊かな装飾を持つ髪飾りを身に付けています。

女性の横顔の周りには、牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、魚座という12星座が描かれています。

星座をあらわす円や風になびく毛先、草花を模したような装飾の曲線がうまく調和しており、デザイン性の高い非常に華やかな作品です。


ミュシャの作品が見られる美術館


ミュシャは、彼が活躍したチェコ共和国やフランスだけでなく、日本においても大変人気のある画家です。日本にもミュシャの作品を専門に取り扱っている美術館があるので、チェコの首都プラハにある美術館と合わせて紹介いたします。


堺アルフォンス・ミュシャ館


堺アルフォンス・ミュシャ館では、ミュシャの描いた絵画、素描、ポスター、装飾パネルなど幅広い作品を所蔵しています。

さまざまな展覧会や独創的なイベント、コンサートなどが定期的に開催される魅力的な美術館で、ミュージアムショップではミュシャグッズをお土産に購入することができます。

・名  称:堺市立文化館 堺アルフォンス・ミュシャ館
・営業時間:9:30~17:15(最終入館16:30)
      ※年末年始・月曜日(休日の場合は開館)・
      休日の翌日(翌日が土・日曜日、休日の場合は開館)は休館
・料  金:一般510円(410円)/高校生・大学生310円(250円)※要学生証提示
      /小学生・中学生100円(80円) 
      ※( )内は20人以上100人未満の団体料金
・住  所:〒590-0014 堺市堺区田出井町1-2-200 ベルマージュ堺弐番館2F~4F
・電話番号:072-222-5533
・公式HP:https://mucha.sakai-bunshin.com/


プラハ・ミュシャ美術館


プラハ・ミュシャ美術館は、1998年にモルダウ川の流れるチェコの首都プラハで開館しました。装飾パネル、パリ時代のポスター、装飾資料集、チェコ時代のポスター、絵画作品、素描とパステル画、写真とゆかりの品という7つのセクションにわかれて展示が行われている大規模美術館です。

ミュシャの親族によって個人的に保存されていたさまざまな資料や貴重な作品も、こちらの美術館で楽しむことができます。

・名  称:プラハ・ミュシャ美術館
・営業時間:10:00~18:00
・料  金:大人260CZK/子供・学生・65歳以上180CZK/家族(大人2名+子供2名)650CZK 
・住  所:Panská 7 110 00 Prague 1
・電話番号:+420 224 216 415
・公式HP:https://www.mucha.cz/jp/


日本の絵画にも影響を与えたミュシャの解説まとめ


豊かな髪と柔らかな肢体を持つ美しい女性、草花などをモチーフとした曲線的で優美な装飾、鮮やかな色彩などで爆発的な人気を得た、ミュシャの作品について紹介いたしました。ミュシャ作品の魅力は国境や時代を越えて、日本の藤島武二や天野喜孝にも影響を与えたと言われています。

アール・ヌーヴォーの代表的な作家、アルフォンス・ミュシャの貴重な作品を間近で見てみたい人は、ぜひ堺アルフォンス・ミュシャ館やプラハ・ミュシャ美術館にも足を運んでみてください。


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