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美術作品のオマージュ・パクリ・パロディの違いとは?作り方や代表例を解説

ルパートスミス
現代アートの買取なら獏

はじめに

こんにちは、東京の美術品買取専門店 獏です。
今回は、美術業界におけるオマージュ・パクリ・パロディについて紹介します。

まず、具象作品には基本的にモチーフがあります。風景画でしたら実際にある場所を描き写し、人物画でしたら実際にいる人物を描き写します。もちろん実際に存在するモノでも見る角度や時間が違えば違って見えるため、対象物を描く人やタイミングが異なると違う作品が出来上がります。
実際に存在するものに手を加えて作家独自の表現を作り上げ、空想上のイメージを具現化することで作家の特色を出し後世に残ります。

前置きが長くなりましたが、【オマージュ】、【パクリ】、【パロディ】は、実際の存在する自然物(風景・花・人・動物など)のイメージを使用する事は対象外で、一度人の手によって作られたイメージを使用する事をさします。
つまり、他人の作品の要素を利用する行為が、制作者の意図により【オマージュ】、【パクリ】、【パロディ】に分類されます。

【オマージュ】や【パロディ】は良い意味として捉えられ、【パクリ】は悪い意味として捉えられています。
普段何気なく使い分けている言葉ですが、明確に理解している方は少ないのではないでしょうか。
美術に携わる立場として、3つの言葉の違いや正しい使い方を分かりやすく紹介したいと思います。

オマージュ

オマージュとは

尊敬する作家や作品に影響を受けて、それらをアイデアの源泉とすることです。一般的にリスペクト(尊敬、敬意)と同義に用いられています。

尊敬する対象に敬意を払っているため、発表時に引用元を明示する事が多いですが、オマージュだとしても著作権の侵害にあたるケースもあるため、鑑賞者などの受け取り手がどのように感じるかが重要です。
元の作品の一字一句そのまま流用するのではなく、敬意を込め個々のアイディアを独自の方法で表現します。
引用元を貶すような作品を制作しているにもかかわらず、オマージュと言えば許される甘い世界ではありません。

ウルビーノのヴィーナス オランピア 森村泰昌 オランピア
※上から、ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」、マネ「オランピア」、森村泰昌「肖像(双子)」です。
森村泰昌の作品はよい画像が無くて少し見にくいですが、見比べると分かりやすいですね。

オマージュの語源はフランス語

オマージュはフランス語の「hammage」が語源です。英語では「homage」と表記します。どちらも「敬意、尊敬、賛辞」の意味を持ちます。本来中世ヨーロッパの封建時代、主君に忠誠心や敬意を示す行為を指す言葉として使われていました。
20世紀初頭ジョージ・オーウェルが描いた「カタロニア賛歌」という作品の中で、音楽に対し「hommage」という言葉が多く使用され一般定着化しました。そしてオマージュという言葉は既存の作品などに対して敬意や尊敬を表すために使用されるようになります。

~オマージュの代表例~

有名な例を紹介します。1863年に描かれたエドゥアール・マネの「オランピア」という作品です。
構図は1538年にティツィアーノが描いた「ウルビーノのヴィーナス」を借用したことで有名です。
また、森村泰昌は1988年~90年にかけて制作した「肖像(双子)」はオランピアをオマージュした作品と言えるでしょう。

時代と世界を超えてオマージュの連鎖が行われています。美術史を理解する事で発見できる喜びだと思います。

ウォーホル

~ウォーホルの作風はオマージュになるのか~

アンディ・ウォーホルという作家はご存知でしょうか?
アメリカ戦後美術より生まれたポップアートの旗手的な存在です。ウォーホルが活動していた時期のアメリカは多くのモノが大量生産され、大量に消費されていました。その大衆に消費されているイメージを借用し、シルクスクリーンという同じイメージを大量に生産できる技法を駆使して作品を製作しました。
大衆のイメージを基に制作した作品を大量に生み出した行為は、崇高で1点モノが尊いとされる芸術の世界への一種のアンチテーゼと言えます。

マリリン
その中でも1967年に制作されたマリリン・モンローのシリーズは、ウォーホルの代表作といえます。
この作品が生まれたのはマリリン・モンローの死がきっかけだと言われ、映画「ナイアガラ」のスチール写真からマリリン・モンローの肖像画を切り出し、シルクスクリーン作品を作り出しました。
マリリン・モンローのイメージを借用したのは、世間から売名行為だと非難されたそうですが、若くして亡くなったマリリン・モンローへのレクイエムだったのではないかと思います。

ただ、解釈によってはオマージュではなくウォーホルが描く肖像画として捉えた方が腑に落ちる方もいるかもしれません。このあたりが美術への解釈の醍醐味でもあり難しさだと感じます。

ウォーホルの作品について知りたい方はこちらのお記事をご覧ください。


パクリとは

悪意のある盗作です。既存のイメージを借用して、自身の手柄にしようとする行為です。イマジネーションを大事にする芸術の世界では言語道断です。
利益のため創作的な表現を盗むことは、違法になる可能性があります。影響を受けた作品に対して敬意を払い、アレンジを加えるオマージュとは異なった意味になります。
ただ、文化が発達し、世界各地で様々なイメージが作られ、それらが保存されている現代では新たなイメージを作り出したとしても、純粋にオリジナルと言えるものは少ないかもしれません。
芸術家と言えど、日常から様々なイメージを見て知らず知らずのうちに脳に刷り込まれている事もあります。そのため無意識に盗作しているケースもあるかもしれませんが、悪意が無いからといって許される行為ではない事は確かです。

~パクリの代表例~

芸術とは異なるかもしれませんが、記憶に新しいのは東京オリンピックのエンブレム問題でしょう。ベルギーの劇場で使用されていたロゴに似ているという指摘があり、当時のワイドショーを騒がせました。真相は分かりませんが、エンブレムが変更になった事が答えではないでしょうか。

パロディ

パロディとは

既存のイメージを基に風刺的な意味合いが強いです。モノマネ芸人も一種のパロディではないでしょうか。人々のもつイメージを誇張して、共感を得てもらい、そこから新たなメッセージや感想を伝達します。
作品から影響を受け創作した作品という点では、オマージュと共通しているといえます。
パロディは比較的にポジティブな受け取り方をされる事が多いですが、風刺的な要素が強すぎると相手を批判する隠れ蓑として見られます。パロディは鑑賞者によって受け取り方が大きく変わるため、作家の力量が試されるでしょう。

~パロディの代表例~

近年、最も有名なのはバンクシーではないでしょうか。イギリス生まれという情報以外はすべて伏せられています。世界で最も有名で影響力があるストリートアーティストでしょう。
世界各地のパブリックスペースに描かれた作品は既存のイメージを駆使した政治的なメッセージが印象的です。
多くの人が認識しやすいイメージを利用して、メッセージ性が強い作品を作っています。既存のイメージを使用することにより、鑑賞者の裾野を広げる効果があります。結果論かもしれませんが、パフォーマンスも含め恐ろしい作家です。

線引きが難しい世界

ここまで3つの用語の違いについて簡単に紹介させていただきました。どれも既に存在するイメージを拝借している事は変りないため、アイデアの源泉として使用される意味合いでは同様といえます。

鑑賞者がどのように受け取るかによりオマージュ、パクリ、パロディの線引きは曖昧です。ある意味「言ったもん勝ち」になっている状況です。作家の知名度や批評家の影響力によりパロディもパクリに成り得ますし、パクリがオマージュに成り得ます。

著作権

まとめ

オマージュとパロディは元あるイメージを借用していると明らかにし、パクリは明らかにしたい点が大きな相違点でしょう。
著作権という立ち位置から見ると、すべてグレーなところではありますが、オマージュやパロディは一つの芸術スタイルとして確立しています。

鑑賞者としても有名なイメージをモチーフにしていると作品に入りやすいメリットもあるため、芸術の入り口としては優れているかもしれません。

一方で、芸術だから何をしても許されるという風潮は危険だと思います。
鑑賞者もユニークな作品だから簡単に受け入れるという訳ではなく、オマージュやパロディを逸脱している作品は批評する精神も持ち合わせた方が美術業界の発展につながるかもしれません。