目 次
はじめに
こんにちは、東京の美術品買取専門店 獏です。今回はいつもと少し目線の違うお話です。
美術品を見て、「作るのにどのくらいの時間が掛かったのだろう?」と思われたことのある方は多いと思います。私自身も美術館でよくそう思います。
ジャンルや手法等によって掛かる時間は千差万別ですが、とある立体作品の作家さんとお話しする機会があり、制作時間はどのくらいなのか伺ってみましたのでご紹介します。立体作品ひとつを取っても、使用する素材(木彫・ブロンズ・大理石など)や作家のスキル、作品の緻密さ等によって制作時間は大きく異なりますので、おおよその傾向として捉えていただけますと幸いです。
(過去に書いたブログで『美術品の値段の決め方』について紹介させていただきました。その中で、「作品の制作時間と販売価格は比例する傾向がある」と内容を書いております。ご興味あれば合わせてご覧ください。→ブログ『美術品の値段の決め方』)
制作時間について
冒頭に記載させていただいたように、制作時間は作品の素材や表現方法によって大きく変わります。作品のジャンル(油絵・日本画・木彫・ブロンズ・陶芸など)や作家の表現方法(具象や抽象など)により大きく異なるため、結論は人による、となります。そのため制作時間よりも『作品を生み出す環境』を判断材料にすると教えてもらいました。
作品を生み出す環境の違い
制作時間に関しては実際に手を動かしている時間だけではなく、構想段階の時間も含めると作家の捉え方でいかようにもなります。そのため、作品を作る前段階として「どの程度の準備が必要か」で大変さを図ります。あくまでも一つの考え方ですので、斜め読みしていただけると助かります。
芸術作品を作る上でジャンルによって必要なモノが異なります。紙と筆だけでどこでも制作できるモノから、特別な機械と防音設備がないと制作できないモノがあります。
洋画家と陶芸作家を比べると分かりやすいと思います。
洋画家は油絵の具を使用してキャンバスに描いて作品を作ります。公募展に出品するような100号前後の作品を除けば一人暮らし用のアパートでも制作できます。賃貸ですと絵の具が付かないように養生しないといけませんが、制作場所を選ばないジャンルと言えます。
もちろん、何を描くかによっては室内では難しいケースもあります。
一方、陶芸家は賃貸アパートで制作するのは現実的でありません。
焼き物を作る上で、土や窯が必要となり、電子窯を使用してもそれなりの場所をとります。本格的な窯を作るのであれば都心部では難しく、土などもこだわると住む場所も限定されます。比較的に窯元が固まっているのは上記のような影響が大きいでしょう。
このように作品技法の種類によって必要な物・費用・場所が異なります。
このような準備を含めて考えると立体関係の作家は大変と言えるのではないでしょうか。
もちろん絵画作家が簡単という訳ではなく、優劣はありません。ひとつの考え方として紹介させていただきました。
まとめ
立体作品全般に言えますが、作家のスタイルや作品の作り込み具合で制作時間は大きく異なります。そのためハッキリとした数字で紹介する事はできませんが、作家は制作時間の長さは関係なく1つ1つの作品を全力で取り組んでいます。制作時間が長ければ価値が上がるという単純な話ではなく、作家の人気・作品の文脈・作家を取り巻く市場など、様々な要因で決定します。
自分で作れそう、自分でも描けそうな作品に出合うことがあるかもしれません。
作品によっては1時間くらいで作られたようなモノもあります。
イメージする制作時間で価値を判断するのではなく、気に入った作品が見つかれば積極的に購入してほしいなと思います。