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菊池コレクション『継ぐ』|菊池寛実記念 智美術館

菊池智 美術館

はじめに

こんにちは、東京の美術品買取専門店 獏です。
先日、菊池コレクション『継ぐ』を鑑賞するために、「菊池寛実記念 智美術館」へ行ってきました。
楽吉左衛門(らく きちざえもん)、三輪休雪(みわ きゅうせつ)、酒井田柿右衛門(さかいだ かきえもん)、今泉今右衛門(いまいずみ いまえもん)の作品が展示されていたのですが、各作家、一級品と呼べる良品が揃っていました。

美術品を扱う立場から申し上げますと、この4作家の作品は市場でよく見かけます。しかしながら、ここまでの良品は殆ど出回っておらず、改めて4作家の素晴らしい才能を感じました。

少し暗めな空間も作品に合っており、また 近代陶芸に馴染みが無い方でも楽しめる内容だと感じました。是非日本人作家の技術力や表現力を皆様にも体感していただきたく、ご紹介させていただきます。

外観
看板

菊池寛実記念 智美術館について

智美術館は高層ビルが立ち並ぶ虎ノ門駅から徒歩約10分の距離と、散歩にはちょうど良い場所にありました。
現代陶芸コレクターである菊池智(きくち とも)のコレクションをメインに、2003年に開館した比較的新しい美術館です。開館にあたりこの場所選んだのは、菊池智の父・寛実(かんじつ)が晩年に活動の拠点としていたことが理由だそうです。寛実はかつて実業家としても名をはせました。

私が訪問した日は、気温30℃以上の夏日でした。虎ノ門駅から徒歩で向かったのですが、美術館の最寄りである虎ノ門ヒルズ駅と地下でつながっており、途中まで涼しく歩くことができました。ちなみに虎ノ門ヒルズはご飯屋さんも多く、休日でも楽しめる場所でした。

美術館は少し高台にあり最後の坂道には若干驚きましたが、高層ビルが並ぶ都心エリアに突如美術館の白壁が表れ、都会の喧騒から離れたような静寂さが漂う場所でした。

館内に入ると目の前に現代作家・篠田桃紅(しのだ とうこう)の大作が目の前に現れます。
右手には美しい庭園を眺めながら休憩できる場所がありましたが、コロナウイルス感染拡大の影響で閉まっており残念でした。

展示会場は地下にあり、螺旋階段を下りていきます。ここでも階段の手摺りが作品、また 階段を下りる途中の壁にも篠田桃紅の作品が壁画の様な形で描かれていました。

展示室も作品に集中できるように極力照明が落とされ、非常に雰囲気が良く、集中して鑑賞することが出来ました。

直入

今回の展示について

楽吉左衛門、三輪休雪、酒井田柿右衛門、今泉今右衛門 4作家の作品で構成されていました。4作家と言っても、それぞれの名前は襲名されているため、実質8作家で構成されていました。今回は最も印象に残った【15代目楽吉左エ門】について簡単に紹介させていただきます。
※楽吉左衛門(15代目)、三輪休雪(12代目)、酒井田柿右衛門(13、14、15代目)、今泉今右衛門(12、13、14代目)

~楽吉左衛門とは?~

楽吉左衛門とは、安土桃山時代に初代・長次郎が創始したと言われており、非常に長い歴史があります。とある説によると、茶の湯の大成者である【千利休】の意志に従い赤樂茶碗、黒楽茶碗を造ったと言われています。その独創的な造形には千利休の『侘の思想』が反映されているようです。
楽吉左衛門と言えば「黒茶碗」や「赤茶碗」が有名です。富士などの絵付けがされている作品もありますが、基本的には柄の無いシンプルな作品の方が評価は高く、代表作とされています。

現在は16代目が当代ですが、今回の展示作品はすべて15代目の作品でした。15代目は隠居後、直入(じきにゅう)と名乗っています。
15代目楽吉左衛門(直入)の作品は絵付けが無く、多数の色を使用した幾何学模様が茶碗という限られたスペース内に大胆に表現されていました。

長い歴史を誇る楽吉左衛門という看板は非常に重く、先代が創り上げた伝統を世襲しなければならないイメージがありましたが、直入の作品は伝統を重んじながらも現代的に進化させたオリジナル性の高い作品となっていました。

智美術館 次回の展示について

コロナ渦の影響で変更がるかもしれませんが、2020年12月12日~2021年3月21日までは『鈴木藏の作陶(仮称)』が開催される予定です。
志野の人間国宝として知られる鈴木藏(すずき おさむ)のコレクション展です。志野焼き以外にも瀬戸黒や黄瀬戸などの幅広い作品群が楽しみです。

まとめ

智美術館では有料での入館一回ごとにスタンプを貯めることの出来るカードを配布しており、集客のための非常に面白い試みだと感じました。

今回ご紹介した菊池コレクション『継ぐ』は2020年7月1日~2020年11月29日まで開催予定です。私が行ったときは事前予約制ではありませんでしたが、行かれる際はHP等で確認されることをおすすめします。

是非とも見に行っていただきたい展覧会でした。