そもそも浮世絵とは?
浮世絵とは江戸時代の初頭に生まれた市井の人々、伝承、美人画、風景など多岐にわたるモチーフを絵画作品にしたものです。直筆で描かれている作品も浮世絵と呼びますが、一般的に木版画作品を連想する方が多いと思います。浮世絵は作家によって多種多様に表現されており、自由に表現できる場でした。自由な風土から生まれた感性豊かな浮世絵はゴッホやマネなどの西洋画家に大きな影響を与えたと言われています。世界に認められた日本を代表する文化です。
復刻版とオリジナルの違いは?
上で説明したように主に江戸時代から明治初頭にかけて制作された木版作品をオリジナルと呼びます。浮世絵に分類されている作家が生前に制作した作品は基本的にオリジナルに分類されますが、復刻版の対比として使用されているので、北斎や歌麿などの有名作家に使用される事が多いです。その人気作家の作品を現代に復活させたのが「復刻版」です。現在までに「復刻版」は数多くの版元から出版されており、市場には多数出回っています。その中で重要なのは「木版」であることです。復刻版と呼ばれるものの中には印刷したポスターも含まれていますが、美術業界ではポスターは復刻版に含めません。
最初から版を掘って、一枚一枚摺った作品のみを復刻版として扱います。復刻と聞くとポスターのように印刷物という先入観を持つ人もいますが、高い技術力と時間がないと当時と同じようなクオリティを再現することはできません。
下記の画像のように、版画として摺られているものは作品の裏から見ると色のにじみが見受けられます。これが木版画の証拠です。
額装する時に隠れる白い余白部分に「彫師」と「摺師」の名前が記されているのも特徴です。
復刻版とオリジナルの明確な違いは歴史的な価値を除いて大きな違いはありません。
また、現代版画と浮世絵の大きな違いは「サインの記し方」です。浮世絵は版上に摺りますが、現代版画は摺り終わった後に鉛筆で記入している事が多いです。
復刻版とオリジナルの市場価格の違いは?
絵画・美術品の買取を専門に行っている立場から紹介させていただきます。まず、市場価格とは店頭やネット上で出ている販売価格ではなく、業者間で売買が行われる卸価格として説明します。美術品は安定的に供給される日用品のような性質ではありませんので、一般小売価格という概念はありません。油絵や日本画などでは号評価と呼ばれる販売参考価格が設定されていますが、冬の日本海のように厳しいマーケットのもとでは確固たる基準とは言い切れません。また美術品の性質上、世界は新品と中古という概念は薄く、プロが売買する場所での相場を市場価格と見なしています。
【オリジナル】は基本的に中古なので当時の販売価格はあてになりません。作家の知名度、作品のコンディション、構図の人気度合いなどを考慮して決定されます。
例えば葛飾北斎の富嶽三十六景でも場所やコンディションによって2倍以上の価格差が出ます。
具体的な金額は作家ごとに大きく異なりますので、お気軽にご相談ください。
オリジナル作品を見る上で重要なポイントを1つ紹介します。
真贋は大前提ですが、買取価格に大きく影響するのは「色」です。現代版画とは異なり接着強度が弱く、非常に色が抜けて薄くなりやすいので、作品によってはかなり色あせているケースもあります。当時の作品と同じ色合いに近いほど評価は高く、色が抜けているほど評価は低くなります。歴史的な価値があってもコンディションが良くないと市場では評価されにくいです。
一方、【復刻版】は発行元やコンディションによって金額が決定されますが、オリジナルに比べると非常に安価な価格帯になると言わざるを得ないです。
作品のクオリティは同程度ですが、美術品としては歴史的な価値が重要となります。北斎や歌麿という歴史上の人物が制作した作品が、遥か200年の時を越えて存在することに価値があります。
販売価格は摺師や彫師などの人件費や材料代を考慮して設定されますので、それなりの金額になりますが市場価格の側面から見ると厳しいのが現実です。浮世絵作品は世界中から需要はありますが、それ以上の作品が出回っているのも理由の一つです。