西田俊英の日本画の買取価格とポイント
1953年生まれ。
三重県伊勢市出身の日本画家。はじめ油絵を学ぶが、高校卒業後に日本画へ転向。武蔵野美術大学日本画科在学時に院展に初入選して以降、さまざまな賞を受賞。大学卒業後は、奥村土牛、塩出英雄に師事。奥村土牛の最後の弟子となる。1983年、山種美術館賞展で輪廻を主題とした「華鬘」で優秀賞を受賞。1984年、東京セントラル美術館日本画大賞展にてインドの牛を描いた「聖牛」で大賞受賞。1995年に文化庁在外研修員としてインドに絵画留学し、インド細密画や人物画を研究、インド各地の風土に多くを学ぶ。在外研修の成果として、インドの長老を正面から描いた「プシュカールの老人」で日本美術院賞と足立美術館賞を受賞。1996年にインドの青年僧を描いた「寂光」で天心記念茨城賞を受賞し、1997年には薄暗い室内で椅子に座る男性を繊細にとらえた「カルロス」で2度目の日本美術院賞を受賞、同作は文化庁買上優秀美術作品に選出される。1998年に日本美術院の同人に推挙される。2002年には孔雀の屏風図「キング」にて文部科学大臣賞を受賞。2017年、屋久島の森から構想を得た「森の住人」で日本芸術院賞を受賞し、同年日本芸術院の会員となる。武蔵野美術大学日本画学科教授、広島市立大学名誉教授。
買取ポイント
西田俊英の作風
西田俊英の代表作といえば、最初に日本美術院賞を受賞した「プシュカールの老人」の様なインドに取材した作品群でしょう。受賞以降もインドを繰り返し訪問し、悠久なるインドの風土とそこに暮らす人々を渾然一体としてとらえた人物画を多く発表しました。人物だけではなく、動物や風景を精緻に描いた作品は、濃淡のコントラストによって聖なる雰囲気をたたえ、インドの風土とそこに息づく生命を神秘的に描き出しています。
一方、ヨーロッパの歴史ある街並みにも惹かれ、叙情的な都会の風景を階調豊かにとらえ、どこか懐かしさを感じる風景画も残しています。
1998年に日本美術院の同人になってからは、日本の古典に回帰しつつも、斬新な構図や色彩を駆使した現代的感覚の新花鳥画を発表し、墨の濃淡を繊細に重ねて描く風景画においては、湿潤な日本の風土を幻想的に描き出しています。2005年に内閣総理大臣賞を受賞した「きさらぎの月」は西行法師の歌から着想を得て、舞い散る桜と白馬の姿を静謐に描き出し、2006年に足立美術館賞を受賞した「吉備の鶴」は六曲一双の大作のなかに、日本古来の装飾性と丹念な線描による写実性を融合して鶴の生命の輝きを描写しています。
西田俊英の現在の評価と価値
西田俊英は初期のインドに取材した人物画や動物画から、2000年代以降、精力的に取り組んだ花鳥画や風景画まで、多様なジャンルを手掛けていますが、一貫してその叙情性に富む繊細な作風が高く評価されています。
2002年に西田俊英個展「祈り」を三越本店で開催してから、2003年に今井美術館、2016年にそごう美術館にて回顧展を催し、以後も百貨店で個展を開催していますが、新しいテーマに次々と挑戦することによって、その表現の幅は年々広がりを見せています。
2017年に日本芸術院賞を授賞した「森の住人」は墨とプラチナを使用し、モノトーンでありながら屋久島の樹林を深い陰影とともに克明に描いて好評を博しました。日本画の確固たる技法に裏付けられた幻想的な空間表現とともに、日本画の精神性を重視しながら深みのある物語性を備えた作風が評価され、日本芸術院の会員にも任命されています。
ボルゾイ犬ゼウスを描いた作品も、西田作品としてよく知られており、ボルゾイ犬の気高く美しい姿と儚く咲く桜の組み合わせは人気作品です。2014年にボルゾイ犬を描いた作品「観」は、毛足の長い洋犬の毛並みを流麗な線で丹念に描き、抽象的な空間で凛として天を見上げる姿をとらえた作品であり、精神性と物語性の調和が見て取れます。同作は第10回春の足立美術館賞に選ばれ、高評価を得ています。