そもそも「現代アート」とは何なのか?
最近よく耳にする「現代アート」、オシャレな雰囲気は伝わっても分かりにくいですよね。衝撃的な絵画や彫刻も多く、どのあたりにアートが含まれるか理解することも難しいかもしれません。見た目のインパクトから「個性がある」「面白い」という感想は持たれがちですが、作品に込められた意味を読み解くまでたどり着けないことも珍しくないでしょう。現代アートの世界は、社会情勢や時代の流れを反映しているのです。
本記事では、「よく分からない」「難しい」と思われがちな現代アートを美術品買取専門店が詳しく解説していきます。「楽しみ方」や代表的アーティストもご紹介しているので、現代アートを鑑賞する参考にしてください。
現代アートの買取なら獏
現代アートの歴史
アートの歴史
美術の歴史は紀元前までさかのぼりますが、本格的な発展はキリスト教の宗教画からです。文字が読めない人へ聖書の物語を描くようになり、そのあとモザイク画やフレスコ画を生み出したビザンティン美術が確立しました。12世紀初めゴシック美術の発達を経て、革新的な概念を持つルネサンス期へ入ります。ルネサンス期は、ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」で知られる初期、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」が有名な北方、教科書に登場するレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を誕生させた盛期(後期)と3つに分類されます。「遠近法」や「油彩技術の確立」、「解剖学の成果」や「リアリズムとプロポーションの再発見」という4つの新しい技法が取り入れられるようになりました。
写実から印象へ
17世紀に入りバロック美術やロココ美術が主流となり、そのあとリアルさを追求する写実主義へ移行。さらにカメラの発明という革命が起こり、風景や人物を記録するという写実絵画の存在意義が問われるようになります。結果、印象派のモネやゴッホ、表現主義のムンクやキュビズムのピカソなど近代芸術家によりさまざまな表現方法も広まり、大きな転換期を迎えることとなります。日本では、開国と同時に西洋文化が入って来た時代。これまでの水墨画や文人画とは異なる洋風画、小田野直武の「東叡山不忍池」や亜欧堂田善の「浅間山図屏風」も大きな話題になりました。そして伝統的技法を使った日本画、西洋の文化や手法を取り入れた洋画へと広がりを見せていきます。
現代アートのはじまり
現代アートは、第2次世界大戦以降の美術です。ヨーロッパで活躍した作家がアメリカへ亡命、その中でも頭角を表わしたマルセル・デュシャンは、美術の概念をガラッと変える作品を生み出しました。1917年、デュシャンは誰でも参加可能なアンデパンダン展に「泉」と名づけた男性便器を出品します。どこからどう見ても便器、当然ながら用を足す以外の使い道はありません。そこへデュシャンがリチャード・マット(匿名)とサインをして出品し、強く影響を及ぼしたのです。便器を素材とした作品は委員会から拒否され、写真家アルフレッド・スティーグリッツの画廊へ展示されることに。そこで撮影された写真は残っていますが、現在はオリジナル作品は存在しておらずレプリカのみとなっています。しかし、「泉」は美術を受動的なものから能動的なものへ改革するきっかけとなり、そこから現代アートは大きく展開していきました。
現代アートはなぜ「分かりにくい」と言われるのか?
デュシャンの言葉
現代美術の父とも呼ばれる彼は、「アートとは鑑賞者が思考を巡らせることで完成する」という言葉を残しています。これの意味するところは、「見た目ですぐ理解できるだけでなく鑑賞者に考えさせ、作品から受け取った感覚と融合したとき1つになる」。つまり誰もが見て分かる色彩やデザインの視点ではなく、「これは何だろう」「この作品にはどのようなメッセージが込められているのか」と鑑賞者に思考させることが重要で、そこに生まれる考え方や心の動きこそがアートを完成させるとデュシャンは提唱しているのです。自由な方法で自己を表現
現代アートは、平面や立体など既成概念に囚われない表現方法が大きな特徴です。「表現主義」とも呼ばれる絵画や彫刻以外にも、映像やパフォーマンスを含め、あらゆるすべての素材で作品を制作することが可能です。例えば時間や空間は生活する上で実用的なものですが、アーティストの視点から表現すれば展示する素材の1つ。普通の人は平均的な考えで使い方を判断しますが、現代アートにおいては自由です。それが便器であろうと、「これはアートだ」と作者が言えば全て「アート」なのです。「普段づかいの物になぜ?」「インパクトが強すぎて意味が分からない」と思われるかもしれませんが、マニュアルとは関係のない発想と言葉で、新しい命を素材に吹き込み表現します。
メッセ―ジ性が高いもの
現代アートの作品の中には、社会問題や政治への疑問など時代背景に対するメッセ―ジ性も込められているものもあります。エネルギーや難民問題、ジェンダーギャップや生物多様性など、あらゆる内容をテーマとして作品を制作。近年では環境問題へのアンチテーゼも含まれ、人間の活動に対する批判も注目されています。ただし、アートは社会問題を解決する手段として存在するのではなく、目の前にある課題へ変化をもたらすきっかけ。それが提起された意味を考え、問題解決の未来へ向かうのは鑑賞者側です。現代アートには、今の時代に生きる人々へメッセ―ジが込められているのです。
現代アートから「読み取る」
壁に貼り付けられたバナナ
イタリアの芸術家マウリツィオ・カテランの作品「コメディアン」は、壁にテープで貼られたバナナです。しかし、「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」と呼ばれるアメリカのアートフェアでは、約1600万円(15万ドル)の値が付けられました。もちろん展示されたバナナは、レプリカではありません。正真正銘のただの「バナナ」でした。それでも「アートだ」と言ってしまえば、アートとしての存在が認められるわけです。ただし、閉幕前日にカテランが壁からはがし食べてしまいました。それをパフォーマンスとしてInstagramで公開し、それ自体もアート活動の一部に位置付けられています。牛のホルマリン漬け
「内容が難しい作品」と話題になったのが、イギリス出身の美術家ダミアン・ハーストの「母と子」です。この作品は、縦2つに切断した牛と子牛のホルマリン漬け。切断された体内にある内臓を観察することが可能で、1995年ヴェネツィア・ビエンナーレで「ターナー賞」を受賞しました。一般的な考え方としては牛の亡き骸ですが、ハーストにかかれば素材になるわけです。ハーストは友人と廃ビルで展覧会を開催するところからアート活動を始めました。本物の動物をホルマリン漬けした作品は、未だかつてないアートとして人間の感覚を大きく揺さぶることなり、かなりの反響を呼びました。パフォーマンスも「アート」!
身体パフォーマンスの作家と言えば、セルビア・モンテネグロ出身のマリーナ・アブラモビッチです。彼女はアーティスト自身を素材と捉え、作品の一部として表現しています。共産主義の政治に対して批判した「リズム 5」、ポニーテールにした髪をお互いの髪に結び、恋人と背中合わせで16時間過ごした「時間の関係」など、人間の活動をテーマとして表現。ときには鑑賞者へオブジェを用意し、それを自由に使わせた「リズム0」と呼ばれる作品も存在します。アブラモビッチのパフォーマンスはかなり過激なものも多く、一般的な思考ではなかなか理解が難しいのですが、時間や空間を利用したアーティストならではの視点で制作されており、これも「現代アート」の一つです。シュレッダーにかけられた作品
2018年イギリスのオークションで、104万2000ポンド(日本円で約1億5000万円)の落札金額となったバンクシーの版画作品「風と少女」がシュレッダーにかけられました。当時ニュースでも大きく取り上げられたので記憶にある方も多いのではないでしょうか。会場で急にシュレッダーが発動し、作品の半分が裁断されてしまいました。それを仕掛けたのはバンクシー本人で、本来であればすべて裁断する予定だったそうです。これは投機対象として金が積まれる社会背景への問題批判ですが、その意味をくみ取った関係者の中には理解を示す人も現れています。このように現代アートは自由に疑問を投げかけ、社会への変化を促しているのです。現代アートの「楽しみ方」
用語を覚えよう
現代アートを鑑賞する時に、これらの用語を知っていると数倍楽しむことが出来ます。【コンセプチュアルアート】
現代アートと同じような意味で使われます。厳密に言えば、1960年代後半~70年代に渡って広まった美術。絵画や彫刻など枠に囚われない概念で、自由な発想から生まれた芸術です。
【インスタレーション】
展示空間を含めた表現方法。空間そのものを作品とするため、展示室を訪れただけで別世界を体験できます。作家がルートを作り、鑑賞者を誘導します。作品の流れや空間を、1つずつの単体作品ではなく、映像や音楽も取り入れ全体をプロデュースするという表現方法です。
【キュレーション】
テーマや時系列などで作品を収集、整理して展示する方法です。展示会を企画する人のことをキュレーターと呼びます。キュレーターは展覧会や個展に欠かせないポジションであり、好きなキュレーターの展覧会を選んで足を運ぶ、というのも通の楽しみ方かもしれません。
他にも沢山ありますが、色々知っていると美術館巡りが今よりもっと楽しめます。
最先端の「現代アート」
現代アート作家の中には、NFT作品を多く発表している作家もいます。NFTとは「非代替性トークン」という意味で、文字通り代替できないオンリーワンのデジタルデータのこと。ブロックチェーンにある識別情報を利用するため、見た目はまったく同じ作品でも世界に一つしかありません。例えるなら、高級ブランドの腕時計にシリアルナンバーが刻まれているようなもの。そこに存在する作品は他でコピーできません。そのため悪質なブローカーに偽物をつかまされることもないでしょう。ただし著作権はアーティストに帰属されます。興味が沸けば「買う」ことも出来る!
気に入った作品があれば買うこともできます。これまでのデジタルアートは簡単にコピーされていますが、NFTにはオリジナルしか存在しません。そのため手に入れた作品は唯一無二。購入したい作品を選んでボタンを押すだけで、誰でも簡単に現代アートを手元に置いておけるのです。ネット環境さえあれば、どこからでも購入可能。手に持って触ることはできませんが、デジタルなので物理的スペースの問題はありません。2017年に登場してから市場も拡大し、VRアーティストせきぐちあいみの作品は1300万円で落札されたこともあります。SNSのアイコン用など比較的安価で発売されているものもあり、現代アートを身近に感じられるのではないでしょうか。知っておくべき現代アーティスト
現代アートを知る上で、押さえておきたい人気アーティストをご紹介します。「難しくて意味が分からない」という人も、名前を耳にすれば聞き覚えのある人が存在するかもしれません。もしくは名前を覚えてなくても、作品を見れば思い出せるでしょう。そのくらい有名な現代アーティストをご紹介いたします。アンディ・ウォーホル
アンディ・ウォーホルは、1928年アメリカのペンシルバニア州に生まれました。アルバイトをしながら高校に通い、当時のカーネギー工科大学へ入学。そこで広告美術を学んだあとニューヨークへ移り、雑誌「ヴォーグ」や「ハーパース・バザー」でイラストを手がけます。1952年、新聞広告の美術部門で「アート・ディレクターズ・クラブ賞」を受賞。1962年にキャンベルベース缶を描いた作品を展示し、そこからポップアートを確立していきました。特に代表作「狙撃されたマリリン」は広く知られ、彼の描いたマリリン・モンローが金髪美女としてのイメージを定着させたと言っても過言ではありません。キース・へリング
キース・へリングは、1958年アメリカのペンシルバニア州に生まれました。1978年にニューヨークへ転居し、スクール・オブ・ビジュアル・アーツへ入学。1980年から地下鉄構内で使われていない広告版に黒い紙を貼り、チョークで絵を描く「サブウェイ・ドローイング」を開始します。シンプルかつポップなアートが大好評。カジュアルで親しみやすい絵はニューヨーカーの間で話題となり、オーストラリア・オランダ・フランスでも壁画を制作するほど知名度も上がりました。生命力にあふれる活き活きとしたアートはさまざまなブランドとコラボし、ファッションや文房具、自転車などのアクセントにデザインされています。草間彌生
草間彌生は、1929年長野県松本市に生まれました。1949年、現在の京都市立芸術大学絵画科を卒業。1952年に松本市公民館で初めての個展を開催、立ち寄った精神科医が絵を購入したことをきっかけとし、そこから百貨店や美術評論家との縁が繋がります。1957年、シアトルへ渡米。そのあとニューヨークへ移住し、大型絵画や立体作品を手がけ注目を集めました。ほとんどの作品に共通するのは、網目模様や水玉モチーフ。これは幼いとき幻聴や幻覚を体験したことに発端しますが、現在それはアートに反映され旭日小綬章や文化勲章を受章するほどの才能へ流れています。白髪一雄
白髪一雄は、1924年兵庫県尼崎市に生まれました。現在の兵庫県立尼崎高等学校に在学中、絵画部へ入部したことをきっかけとして画家を志します。京都市立芸術大学日本画科を卒業したあと油絵へ転向。床に絵具を置いて描く手法やフット・ペインティングを取り入れ、他にはない独特のタッチで描くようになりました。スターバックスの創始者ハワード・シュルツが部屋に代表作「臙脂」を飾ったのは有名で、「タジカラ男」や「作品B」など、鮮やかな色合いと力強さが魅力です。1971年に比叡山延暦寺で得度。その後「兵庫県文化賞」や「文部大臣文化功労者表彰」を受賞しています。KYNE
KYNEは、1988年福岡県に生まれました。高校で油絵、大学で日本画を学び、2006年にアーティスト活動を開始。クールな女の子をモチーフとした作品が人気で、20代~30代の若者を中心に支持されています。2020年ギャラリー「SA」で個展を開催し、そこで発表された「Untitled」はRAYARD MIYASHITA PARKのオープン記念として、Tシャツやパーカーへデザインされました。2021年6月にはアディダスオリジナルズとコラボし、「adidas Originals by KYNE」を発売。ファッションやカルチャーと相性の良い作品が多く、現代アートを牽引する今最も熱いアーティストの一人です。ロッカクアヤコ
ロッカクアヤコは、1982年千葉県に生まれました。グラフィックデザインの専門学校を卒業。そのあと就職せずデザイン・フェスタへ参加し、このとき初めて筆を使わず手で描く手法を確立しました。2002年から路上で創作活動をスタート。翌2003年、村上隆が主催する現代美術の祭典へ参加し、スカウト賞を受賞します。2006年にスイスのアート・バーゼルへ出展、ライブペインティングで100枚以上の作品を売り上げ、2010年ドイツのベルリンに移住。ダンボールにアクリル絵の具、和紙へクレヨンを使った作品もあり、ジャパニーズアニメのアートとしてヨーロッパで人気を博しています。現代アートを売りたいときは?
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